国内の企業は多くが中小企業ですから、全国の中小事業者の皆さんのおかげで我が国の経済が回っていると言って過言ではありません。
どうしても資金力の面で脆弱になりがちな中小企業には公的な支援策が数多く用意されています。
例えば倒産防止共済制度もその一つで、別名経営セーフティ共済とも呼ばれています。
本章では倒産防止共済制度がどのようなものか、メリット・デメリットなどを詳しく見ていきますので参考になさってください。

倒産防止共済制度とは?

倒産防止共済制度とは?

中小企業は経営体力の面で脆弱であることから、取引先が倒産するなどした場合に、その影響に耐えられるだけの余裕がないことが多いです。
「連鎖倒産」という言葉を聞いたことがあると思いますが、これはある一社が倒産すると、その会社と取引があった会社が連鎖的に倒産してしまうという現象です。
連鎖倒産が起きるとその地域の産業が一気にダメになってしまう可能性があるなど、地域経済にとって大きな痛手となります。
そして本来倒産する必要のない会社までもが、他社の倒産という事象に巻き込まれて引きずられるように潰れてしまうことは、国全体の国力維持にとっても不都合です。
そこで、取引先が倒産するなどして売掛金が回収できなくなった企業が連鎖倒産を起こさなくて済むよう、いざという時に資金調達を容易に行えるようにする施策として倒産防止共済制度が作られました。
掛け金は5千円単位で自由に設定可能、また掛金は途中で増減の調整もできます。
任意で解約もできるので柔軟性がある制度です。

倒産以外でも救済可能

倒産以外でも救済可能

取引先の倒産等に際して必要な資金調達が容易にできるということですが、実際には倒産以外にも以下のような事情で取引先が稼働停止状態となった場合に利用できます。

・法的整理
・取引停止処分
・でんさいネットの取引停止処分
・私的整理
・災害による不渡り
・災害によるでんさいの支払不能
・特定非常災害による支払不能

また上のような緊急事態があるかどうかに関わらず、下で見るように一時貸付を受けられるメリットもあります。

倒産防止共済制度のメリット

倒産防止共済制度のメリット

ここでは倒産防止共済制度のメリットをまとめて見ていきます。

メリット1:無担保・無保証人で借り入れ可能

取引先が倒産等して売り掛け金の回収が困難になった場合に共済金の借り入れが可能となりますが、その際に担保や保証人を用意する必要はありません。
共済金貸付の上限は倒産等した取引先に対して保有する売掛債権の額、もしくは納付済みの掛け金総額の10倍(最高8,000万円)のどちらか少ないほうまでです。

メリット2:難しい条件が付かない

共済金の貸付け希望の申し出があった場合、倒産等した事業者との取引の確認が済めばすぐに共済金が支払われます。
銀行融資のように利用企業の信用調査などで長期間待たされることがありません。

メリット3:掛金は経費に計上できる

本制度の掛金は月額5,000円~20万円までの範囲で利用者側が自由に設定できます。
途中で掛け金を増やしたり減らしたりすることも自由で、その時々の懐具合を見て掛け金の額を調整できます
また掛け金は法人なら損金に、個人事業なら必要経費にできるので、事業で生じた利益を計算上で圧縮し節税効果を生みます。

メリット4:解約手当金がある

本制度は民間の生命保険に似ている部分があり、まず任意で制度から脱退することが認められ、自己都合であっても解約が可能です。
さらに解約時には解約手当金を受け取れ、40か月以上納めていれば掛金全額、12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻ってきます。

メリット5:緊急時以外でも一時貸付が可能

取引先の倒産など緊急時以外にも一時貸付を受けることが可能で、これも民間の生命保険の契約者貸付に似ています。
一時貸付を受けられる額は共済掛金の納付期間によって変動しますが、最大で掛け金総額の95%の貸付けを受けられます。

デメリット

デメリット

本制度にはデメリットもあるので以下でまとめてみましょう。

デメリット1:解約による元本割れがある

任意解約が認められ、解約手当金の制度があるのは嬉しいのですが、掛け金の納付期間が12か月未満の場合は解約手当金が受けとれません。
この場合は納めた掛け金は掛け捨てとなってしまいます。
また納付期間が40ヶ月未満の場合、解約手当金は支払われるものの元本割れするため損を出すことになります。

デメリット2:解約手当金は税金の対象に

解約する際に支払われる解約手当金は所得として扱われるため税金の課税を受けます。
ただし法人でも個人事業でも他の経費計上や節税の施策を活用して所得を抑えることが可能なので、必ず解約手当金分の税金の支払いが必要になるとは限りません。

申し込み方法

申し込み方法

倒産防止共済制度は独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が申し込みの窓口になります。
中小機構は経済産業省所管の機関で、倒産防止共済制度以外にも経営者の退職金を用意できる制度なども運営しています。
相談や申し込みは中小機構の公式サイトから可能です。
https://www.smrj.go.jp/index.html

まとめ

本章では倒産防止共済制度がどのようなものか、メリット・デメリットと共に見ていきました。
取引先の倒産に巻き込まれて連鎖倒産を起こすこがないように作られた制度で、財務体力の弱い中小企業のセーフティネットの役目を果たします。
全体的に民間の生命保険に似ていて、任意脱退が認められ解約手当金の制度もあるので、完全な掛け捨てではない安心があります。
掛け金の調整ができるという柔軟性もあり、使い勝手は悪くありません。
取引先の万が一を心配する事業者の方は一度検討してみてください。