企業経営においては会計経理や税務処理を適切に行うことが求められます。
税金に関しては苦手意識を持つ経営者の方が多い印象ですが、だれでも余計な税金は払いたくないものですよね。
この回では節税と脱税の違いを解説し、税金の処理を誤った時の罰則についても基本を押さえていきますので、ぜひ参考になさってください。

■節税とは

節税イメージ画像

節税は簡単に言えばルールにのっとり合法的に税金を浮かせることを指します。
元々、税法では事業主や企業の税金の負担を軽くできるよう、節税に関するルールが色々と設けられています。
例えば経費計上できる出費は事業上で出た利益を圧縮し、課税対象を小さくして法人税などの税金を軽くすることができます。
このように税法のルールを使って税金を浮かすことを節税と言い、元々税法上で予定されていることですから完全に合法であり、責められることは一切ありません。

■脱税とは

脱税イメージ画像

一方で脱税は税法上のルールを逸脱して、ルールを無視して税金を軽くしようとする行為です。
例えば本来経費に計上できないものを無理やり経費に算入したり、売り上げをごまかして本来の利益額よりも少なく見積もり、課税金額を不当に小さくするなどの行為があたります。
同じだけの利益を出しているA社とB社がいて、A社は適切な税務処理を行って100万円の税金を納めたとして、B社は脱税行為を行って50万円しか税金を納めなかったらとても不公平ですよね。
ですから脱税行為には罰則があり、事業者にとってかなり厳しいものになります。
税務上の罰則には以下の四種類が用意されています。

①無申告加算税

必要な申告手続きをしなかった場合に適用があるもので、本来納税が必要な額にケースに応じて5%~20%が上乗せされます。
短期間に税務違反を繰り返した場合はさらに厳しく25%~30%になることもあります。

②過少申告加算税

本来よりも納税額を少なく見積もった場合に適用のあるものです。
追加で必要となる納税額にケースに応じて5%~15%が上乗せされます。

③重加算税

悪質性がある事案で上の無申告加算税や過少申告加算税に代えて適用される罰則です。
意図的な脱税事案では重加算税が適用される可能性が高いです。
無申告加算税に代えて適用される場合は原則として40%、過少申告加算税に代えて適用される場合は原則として35%が上乗せされます。

④延滞税

延滞税は民間の借金でいうところの利息のようなものです。
必要な納税がなされるまでの間はずっと課税されます。
利率は原則として納期限の翌日から2か月を経過する日までの期間については年7.3%、それ以降については年14.6%す。
ただし現在は一定の負担軽減措置があります。
上記は税法上の罰則ですが、悪質性が相当強い事案では刑事罰の適用もあり、刑法上の罰金刑や懲役刑が適用になる事もあるので、金銭的なダメージだけでは済まされないこともあることを知っておきましょう。

■租税回避とは

法律抜け穴イメージ画像

節税と脱税の違いは線引きがはっきりしているので分かりやすいと思います。
線引きがあいまいになりやすい言葉として「租税回避」というワードもあるので簡単に押さえておきましょう。
租税回避は、税法が想定していない方法で課税を回避しようとする行為を言います。
元々税法は節税を可能にするために経費算入を可能にするなどルールを設けていますが、そのように国が想定しているルールではなく、制度の抜け穴を見つけて課税を回避しようとする行為を租税回避といいます。
税務署からみると苦々しいことなので目を付けられることになるとは思いますが、課税する根拠がなければ税金をとることはできません。
ただし租税回避が見られれば、国はこれを封じるために法律を改正することになるので、いずれはできなくなってしまいます。
また税務署に目を付けられることは長い目を見ればデメリットになるので、租税回避行為ができたとしても避ける方が無難と言えます。

■適切な会計経理で堂々と節税を目指そう

決算報告書イメージ画像

脱税は自身に不利益が及ぶ危険な行為ですので絶対に避けなければなりません。
租税回避にあたる行為も長い目で見れば不利益が及ぶ可能性がありお勧めできません。
ルールに則った節税であれば大手を振ってできますから、適切な会計処理を心がけて堂々と節税を目指しましょう。

■まとめ

まとめ画像

この回では「節税」と「脱税」の違いについて見てきました。
ルールに従って税金を浮かすのが節税で、ルール違反してまで税金を浮かそうとするのが脱税です。
当然脱税行為には罰則が用意されていて、税法上では金銭的な不利益が及ぶように設計されています。
悪質事案には刑事罰の適用もあり身柄拘束の事態もあり得るので、やましい考えは持たずに正々堂々とルールに則った節税を目指しましょう。