事業経営者にとって資金調達は常に悩みの種となりますが、銀行融資など完全に民間に依存する方法だけでなく、公的な制度としての資金調達手段も存在します。
金利面や保証、担保方面で有利になる事が多いので、可能であれば検討したいものです。
今回は「マル経融資」という支援制度を取り上げて、どのような性質をもつのか、その仕組みやメリット、デメリットなどを見ていきます。

■マル経融資とは?

融資を表す画像

マル経融資は日本政策金融公庫が扱う公的な融資です。
日本政策金融公庫は民間の銀行と違い、儲けを追及せず企業支援に特化する金融機関なので、事業者にとってありがたい存在です。
日本政策金融公庫は様々な融資制度を所管していますが、マル経融資の特徴としては、事業者と公庫の間に地元の商工会議所を介在させ、商工会の推薦を受けることを融資の利用条件の一つとしています。
商工会議所の推薦を受けるには一定の経営指導を受けることが必要になりますが、これにより、我が国の経済発展につながる事業者を育てた上で公的な支援を提供できるようになります。
日本政策金融公庫の資金は国民の税金ですので、国民に資する事業者に融資対象を絞るため商工会議所を介在させているのです。
ちなみに、本融資制度の正式名称は小規模事業者経営改善資金というのですが、長い名称なので資料などに「経」の字を丸で囲んで表記するのが通例であるため、呼称として「マル経」と呼ばれています。

■マル経の融資内容

内容を考えるイメージ画像

マル経の融資限度額は最大2,000万円で、返済期間に関しては運転資金は7年以内(据置期間は1年以内)、設備資金は10年以内(据置期間は2年以内)となっています。
担保や保証人は不要で利用できます。
第三者保証はもちろん、代表者の保証も不要ですから、経営者にとって負担とならないのが大きな利点です。
儲けを追求する民間の銀行では必ず担保か保証人が必要ですから、公的支援制度のありがたさを実感できますね。
金利に関しては令和5年12月時点では特別利率Fが適用され、年利1.20%となっています。

■マル経融資を利用できるのは?

契約書イメージ画像

無担保、無保証で利用できる代わりに、公的な支援制度であることから利用には細かい条件が付きます。
以下で条件を確認します。

①小規模事業者であること

まず、小規模事業者に該当しなければ対象になりません。
小規模事業者に該当するのは以下の事業者です。

業種 雇用する従業員
商業・サービス業 5人以下
宿泊業・娯楽業 20人以下
製造業・その他 20人以下

 

②1年以上の事業実績があること

本制度は商工会を関与させるため、地元の商工会議所の地区内で1年以上の事業実績を有していることが条件になります。

③6か月間の経営指導を受けていること

事業実績があるだけではダメで、商工会議所による経営指導を6か月間受けていることも条件になります。
商工会議所には経営指導員や弁護士などの専門家が在籍していて、企業として力を付けられる支援を提供しています。
これにより、潰れにくい、経済活性に資する事業者の育成につなげているので、指導を受けるのが面倒と考えるのではなく、積極的に利用する姿勢を持つのがお勧めです。

④税金の滞納がないこと

国民の税金を資源とした支援策であるため、法人税などの税金の滞納がある事業者は利用できません。
もし滞納があるようなら事前に完納してから利用申請を出しましょう。

■メリット

無担保・無保証で利用できるのが最大のメリットですが、金利面でも非常に優遇されていますから、銀行融資と比べると圧倒的に有利です。
また公的な制度でありながら、審査の面では比較的ハードルが低く、創業開始から1年程度の実績で利用の道が開けるので、スタートアップの事業者に利点があります。

■デメリット

商工会議所の経営指導を受けるのに半年の期間が必要なので、すぐに融資を受けることができません。
緊急の資金調達手段としては使えない他、起業に先立つ創業融資としても使えないなどのデメリットがあります。

■必要書類

マル経融資を利用する場合の必要資料を確認します。
法人と個人事業主で違うので、以下で見ていきます。

<法人>

・前期及び前々期の決算書と確定申告書
・法人税、法人住民税の納税証明書
・商業登記簿
・設備資金の場合は見積書など

<個人事業主>

・前年及び前々年の収支内訳書と確定申告書
・所得税、住民税の納税証明書
・設備資金の場合は見積書など

個別のケースで他に必要な物が出ることがあるので、利用の際に確認してください。

■利用手順と流れ

手順説明画像

マル経の利用申し込み窓口は地元の商工会議所が担当しています。
以下のような手順で申請を進めていきます。

①事前相談

条件を満たしていればいきなり申し込みをすることもできますが、多くのケースでは事前相談からスタートします。
マル経融資の利用を考えている前提で、相談日時を詰めてください。
利用条件を満たしていない場合は、それをクリアするにはどうすれば良いかのアドバイスを受けられます。

②申し込み

利用条件が整ったら商工会議所からGOサインがもらえますので、融資の申し込みを行います。

③商工会議所による審査

審査は二段階あり、まずは商工会議所が審査を行います。
経営指導が入っているはずなので、申し込みを促されたのであれば特段の事情がなければ審査に落ちることはないはずです。
商工会議所の審査に問題がなければ、日本政策金融公庫に対して推薦がなされます。

④公庫による審査

本制度は本来的に日本政策金融公庫の資金で運用されているので、同公庫が主体となって最終的な審査がなされます。
ただし商工会議所の目がすでに入っていて、問題ないと判断されて上がってくる案件ですから、こちらも特段の事情が無ければ審査に落ちることはないとされています。

⑤融資実行

公庫による審査に受かれば晴れて融資を受けられます。

■まとめ

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本章では「マル経融資」とはどのような支援制度なのか、その仕組みやメリット、デメリット、利用手順などを見てきました。
公的な支援制度のため利用に際しては迅速性、柔軟性は期待できないものの、無担保、無保証、低金利というメリットがあり、創業間もない事業者にも利用の道が開かれています。
緊急資金としては利用できませんが、数年スパンを意識した事業資金の確保手段として用いることができるので、ぜひ検討してみてください。