企業経営においては事業資金を如何にして確保するかが悩みの種となります。
経営者は本業はもとより、常に資金調達についても考えておかなければならないのでなかなか大変です。
資金調達面では単に現金を確保すれば良いというものではなく、その資金がどのような性質のものなのか、調達先とどのような関係が生じるのかについて正しく理解する必要があります。
本章では経営者が知っておくべき資金調達法の種類と経営面への影響などについて解説していきますので、参考になさってください。

■資金調達は借り入れだけではない

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資金調達と言えば銀行からの借り入れを想像することが多いと思いますが、それは多くの手段のたった一つに過ぎません。
資金調達は一般に事業運営に充てる資金を確保する行為をいいますが、性質の異なる資金調達法として大きく3種類が存在します。
資金の調達先との間に生じる関係性に違いが出たり、経営面への影響の出方にも違いがあるので、これらを正しく理解しておくことは経営者として大切です。
次の項からは3種類の資金調達法について個別に見ていき、それぞれの具体的な調達手段についても深掘りします。

■負債の増加

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一つ目の資金調達方法は負債を増加させる方法です。
簡単に言えば借り入れということですが、下で見る資本の増加との違いを捉えるために負債が増加することの意味を捉えておきましょう。
負債は自社の資本とはならないので、手に入れた資金はいずれ返さなくてはなりません。
ただ返すだけではダメで、利息を上乗せしなければならないので金銭的にはマイナスです。
それでも借り入れた資金で儲けを出し、元本と利息以上の利益を確保すれば金銭的に潤います。
ただし返済期日までに返済できないと違約金や遅延損害金などのペナルティが発生し、ダメージが大きくなります。
契約で約束した期日までに完済できるようにしないと、経営の存続に影響する事態ともなりかねないので十分注意が必要です。
負債の増加を伴う具体的な資金調達手段としては以下のような方法があります。

①銀行やノンバンクから融資を受ける

多くの企業でメインの資金調達手段となっている方法です。
銀行は金利が比較的安く済みますが融資実行までに時間がかかるなどのデメリットがあり、中小企業はそもそも融資を否決されることもあります。
ノンバンクは中小の事業者も相手にしてもらい易いですが金利が高くつきます。

②日本政策金融公庫からの融資を受ける

民間の銀行やノンバンクからの借り入れが難しいスタートアップ企業などは公的な金融機関である日本政策金融公庫の利用を検討できます。
立場の弱いスタートアップ企業が利用しやすいプランがいくつか用意されており、金利も比較的安く済みます。
その代わり細かい条件を満たす必要があり、融資実行までに銀行以上に時間がかかるので迅速性は皆無です。

③社債を発行する

社債を発行して広く資金を募ることもできます。
他の企業や一般個人に購入してもらい、約束した期日に返済を行います。
強い信用性が無いと買ってもらえないので、スタートアップ企業や零細の企業では実現できません。

④経営者や親族から借り入れる

法人に対して経営者個人が自己の財産から原資を充ててお金を貸し付けることもできます。
同じように経営者の親族なども資金の貸し付けが可能ですが、個人の資金力ですのでダイナミック性はなく、小口の資金需要などにしか対応しません。

■資本の増加

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借り入れは負債の増加であり返済が必要で、金銭的には基本的にマイナスとなる行為です。
資本の増加により手に入れた資金は自分(自社)のものとなるので、返済の必要がありません。
利息上乗せによる金銭的なダメージも生じないので、長期的に安定した事業資金として活用することができます。
資本増加による資金調達は株式を発行し出資者を募ることで可能になります。
発行した株式を購入してもらい、出資者はその会社に資本提供の形でお金を交付します。
これにより出資者は株主の立場を取得することになるので、会社の経営に一定程度口を出すことができるようになります。
これが上で見た負債の増加による借入先との関係の違いです。
借り入れにかかる融資元は、基本的にはお金を出すだけで経営にまで口を出すことはありません。
資本増加の場合は出資者が株主として経営に参画する権利があるので、自由な経営に支障が出る可能性があります。
資本増加による資金調達の具体的な手段には以下のようなものがあります。

①第三者割り当て

広く公開して株主を募る方法です。
実績と信用がある会社であれば購入希望者が現れるでしょう。

②ベンチャーキャピタル

スタートアップなどで実績が無くても、将来に有望性があれば投資対象として見てもらえます。
そうした企業に専門的に投資するのがベンチャーキャピタルで、彼らの支援を得られれば大きな実績がまだ作れていなくとも資金獲得が可能です。

③エンジェル投資家

ベンチャーキャピタルの個人版です。
個人なので資金額は少額になりますが、個人的興味の強い分野には積極的に投資してくれる傾向にあります。

④クラウドファンディング

近年利用されることが増えている方法で、ネットを介して広く一般の個人から少額の投資を募ります。
こちらも大きな実績がない企業でも利用でき、社会的に意義のあることや他で取り組まれていない面白いビジネスや商品開発などを進めるケースで有効です。

■資産の現金化

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負債や資本の増加は本来的に外部の資金力を活用するもので、要するに他人頼みとなるものです。
自己体力での資金調達ができれば経営に口を出されたり、返済による金利負担が生じるようなこともありません。
会社が保有する資産の現金化を行うことで自力での資金調達が可能になります。
具体的な手段としては以下のような方法があります。

①ファクタリング

弊社でも提供しているファクタリングは流動資産に分類される売掛債権を現金化するものです。
売掛債権は元々自社の資産であり、債権→現金に形を変えて事業資金として活用することができます。
流動資産による資金調達は国も積極的に推進していますので、今後益々利用の機会が増えると予想されます。

②不動産や動産の売却

掛け取引を行っていない場合は売掛債権が発生しないので、その場合は不動産や動産などの資産を現金化することで事業資金化を見込めます。

③リースバック

保有する不動産などの資産が事業に使用するものである場合は、売却すると事業を継続できなくなります。
その場合は一旦売却をするものの、その後は買い手に賃料を払って借り受けて使用するリースバックを検討することもできます。
不動産だけでなく事業に使用する自動車や工場の機械、機材などもリースバックの対象にできます。
ただしリースバックに対応する買取業者を探すのは一般に手間を取ることが多いです。

■まとめ

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この回では経営者が知っておくべき資金調達法の種類や手段について見てきました。
経営者としては細かい調達手段の前に負債や資本といった概念を理解し、自社への影響ができるだけ少なくなるような手段を検討できるようにしたいものです。
借金となる負債の増加は返済義務が生じ、利息負担による金銭ダメージは避けられません。
資本の増加は株主を迎え入れることになるので、一定程度経営への参画を求められます。
自力で資金調達ができるのは資産の売却のみで、可能であればこちらから先に検討したいところです。
いずれにしても、それぞれの調達法の性質を理解したうえで状況にあった方策を検討するようにしてください。