銀行から融資を引き出すには様々な資料を用意、作成しなければならず、事業者にとって非常に手間がかかる作業になります。
必要資料の一つに事業計画書があり、作成に特に手間と時間を取られます。
本章では事業計画書がどのようなものか、なぜ求められるのか解説し、後半では作成方法についても見ていきますので、ぜひ参考になさってください。

事業計画書とは?

事業計画書

銀行で融資を打診する際には貸借対照表や損益計算書などの財務諸表も提出しなければなりませんが、これは銀行が融資対象となる企業の財務体力や現状での経営状態を把握するために必要だからです。
今が良くても将来にわたって利益を安定して出していけなければ融資した資金の返済を受けられなくなる可能性もあるので、その安心を得るためには別の資料が必要です。
そのための資料が事業計画書であり、数年の期間を見積もって利益を出し続けられるプランニング資料として作成を求められます。
仮に現状で経営状況がパッとしない場合でも、事業計画書をしっかり作り込み、今後安定した利益を出せる見込みであることを銀行に示すことができれば、融資を引き出せる可能性が出てきます。
決算内容が良くない場合は事業計画書の重要性が特に増してくるということを覚えておきましょう。

銀行ごとに決まった書式があることも

銀行ごとに決まった書式があることも

事業計画書は銀行によって書式が決まっていることがあり、その場合はその書式に従って作成することになります。
決まった書式が無い場合、ネット上からテンプレートをダウンロードして使うこともできます。
銀行で独自の書式が指定されていない場合でも、ダウンロード先を指定されることがあるので、まずは担当者に確認してみると良いでしょう。
次の項では事業計画書でどのような記載が求められるのか見ていきます。

事業計画書の作成方法

事業計画書の作成方法

事業計画書では以下のような記載内容をまとめていきます。

①経営理念や会社の目的

その会社が社会に存在する意義として、会社を設立した目的や経営理念を伝える項目です。
社長さんであればさほど迷いなく書けるかと思いますが、もし筆が詰まってしまうようなら起業した当初を今一度思い返してみましょう。
真っ当な会社であれば必ず社会の役に立つ事業を行っているはずですから、自社が提供するサービスなり商品が社会に必要とされていること、そしてそのニーズに応えるために事業を行っている旨を説明しましょう。

②会社概要

所在地や設立年月日、従業員の数など会社概要を記載します。
ここはあまり悩むことはないでしょう。

③経営者の素性や経歴

経営者のそれまでの経歴を記す項目です。
最初は履歴書に記載する感覚で下書きをしてみても良いですが、目的は融資を引き出すことですので、例えば過去に受けた融資で利益を出し、返済もしっかり終えたなどの実歴を記載するようにします。
これにより融資担当者に安心を与えることができます。

④自社の商品・サービスについて

自社でどのような商品やサービスを提供しているかを記す項目です。
単に自社製品の説明をするだけではダメで、市場で大きな需要があることや、商品等の提供によって顧客に喜ばれていることなどを説明しなければなりません。
需要層については年齢や性別なども説明し、どのような属性の需要に応えるのかといったところまで説明します。
自社の製品やサービスが同業他社と比べて秀でているところがあればぜひ説明しましょう。

⑤具体的な販売戦略

この項目はあまり外に出したくないような機微な内容を扱う項目ですので、事業主としては消極的になりがちですが、融資を引き出すにはこうした情報も出さなければなりません。
この項目では自社がなぜ利益を上げられているのか秘密を暴露することにもつながるもので、例えば何らかの商品を販売する事業であれば、どこから仕入れをしていて、原価が幾らで、これをいくらで販売し、いくらの儲けを出しているのか、といったことを記載します。
資材の調達先やコストなどは他社には知られたくない情報ですから、相手が銀行といえども提示するのは気が引けるかもしれません。
しかしここを十分に説明しないと担当者は相手が確実に利益を上げて返済してくれるか確証が持てないので融資否決となってしまいます。

⑥損益計画

手間がかかるのが損益計画の項目です。
月次単位、年次単位で損益計画を立て、シミュレーションを行います。
それぞれ、資金の流れを説明するキャッシュフロー表を作成し、同時に将来予想される損益計算書や貸借対照表なども作成します。
例えば商品の売り上げを1日単位で想定し、月単位でまとめ、月次の計画を立てます。
これを年次の計画としてまとめていきます。
現状で売り上げが芳しくない場合、損益計画作成のハードルが高まります。
社長さんだけでは説得力のある計画を立てられない場合、下で見る専門家に相談することで糸口を見いだせることがあります。

⑦返済計画

上で見た月次、年次の損益計画を基に、返済にかかる資金をどうやって捻出するのか、また返済の回数やタイミング、完済までの期間などを説明します。
返済計画はしっかりとした根拠がなければ絵に描いた餅であり、上で見た損益計画がその説明根拠として機能します。

事業計画書作成の支援サービス

事業計画書作成の支援サービス

事業計画書の内容は事業主が難なく書き進められる事項もありますが、損益計画や返済計画などはやってみると意外と難しいことが分かります。
特に現状で売り上げ状況が芳しくない、経営状態が良くない場合は融資担当者を納得させる説明が難しいこともあるでしょう。
そのような時は外部の専門家に助言をお願いすることもできます。
各地の商工会や、自治体に設置されているよろず支援拠点などは資金調達時の事業計画書作成の相談に乗ってもらえます。
こうした支援サービスを適宜活用してください。

まとめ

本章では銀行融資を受ける際の事業計画書について取り上げて見てきました。
事業計画書は将来にわたる利益確保の道筋と、それを基にした返済が可能であることを融資担当者に示すための資料です。
仮に現状で経営が芳しくなくても、事業計画書で十分返済が可能であることを示せれば融資妥結に繋げられる可能性があります。
一人で作成するのが難しい場合は専門家を活用することもできるので、上手に利用してください。