スタートアップ企業や中小の事業者は信用や事業実績が少ないため、一般の銀行融資が利用しづらいというハンデがあります。
そうした経営基盤の弱い事業者にとって政府系金融機関である日本政策金融公庫は強い味方になります。
本章では日本政策金融公庫の融資制度を利用する際の申請手順や注意点を見ていきます。
■自分で申請する場合の流れ
①事前相談
下で見る認定支援機関を使わない場合は、直接公庫の窓口に申請することになります。
その際、事前相談として電話やWEB面談を活用することができます。
いきなり申請するとしても不備が生じて余計な手間がかかる可能性があるので、事前相談をぜひ活用しましょう。
WEBからの相談予約は以下のサイトから可能です。
https://www.jfc.go.jp/n/service/heijitsu_soudan.html
②申し込み
申し込みは公庫の各支店で受け付けています。
万一不備があった場合に直接指導を受けられるので窓口での手続きの方が安心できますが、公庫の窓口は少ないので、遠方の場合はネット申請の利用も考えましょう。
ネット経由の申請はこちらからできます。
https://www.jfc.go.jp/n/service/apply.html
③面談
申し込みが完了してから一週間程度すると、公庫の担当者から面談の連絡があります。
通常は公庫の支店で面談が実施されますが、場合によっては事業者側の事務所に担当者が出向いてくれることもあります。
面談では事業計画の内容について詳しい聞き取りがなされ、予定した売り上げの確保をどのように実現するのか、またどのような具体性をもって返済計画を進めていくのかなどを細かく聞かれます。
充分に受け答えができるように準備しておきましょう。
④結果通知
面談からさらに一週間程度後に融資可否の連絡が来ます。
通常は結果通知書が郵送されますが、ケースによっては電話連絡となることもあります。
■認定支援機関を利用する場合の流れ
①認定支援機関への相談
認定支援機関は事業者の伴走サポートを行い資金調達や経営課題解決のお手伝いをする専門家あるいは専門機関をいいます。
国が認めた個人、法人が認定支援機関となり、これを利用することで日本政策金融公庫の融資を利用しやすくなります。
特に下で見る事業計画書の作成を手伝ってくれるメリットがあり、納得感のある事業計画及び返済計画の作成が可能になります。
全国の認定支援機関は以下で検索できます。
https://www.ninteishien.go.jp/NSK_CertificationArea
サポートを受けて事業計画書などの書類を準備したら公庫の窓口に提出します。
②認定支援機関経由で資料提出
認定支援機関を利用する場合、公庫への資料提出は事業者ではなく認定支援機関が提出してくれます。
③公庫による面談
認定支援機関を利用する場合も公庫による面談は必須です。
ただしこちらの場合は公庫の許可を取ることで認定支援機関の担当者にも面談に同席してもらうことができます。
④結果通知
面談から一週間程度した後に郵送もしくは電話で融資可否の結果が通知されます。
■必要書類
日本政策金融公庫の融資では借り入れ申し込み書の他に必ず創業計画書や事業計画書の作成、提出が求められます。
この計画書をどれだけ精巧に作り込めるかが融資獲得のカギになります。
自信があれば自分で作成することもできますが、よほど経験のある人でなければスムーズな作成は難しいかもしれません。
懇意にしている税理士や行政書士、中小企業診断士など経営サポートに携わる専門家が身近にいればぜひ相談してください。
身近にいない場合はやはり上で見た認定支援機関のサポートを受けて作成するのがお勧めです。
この他にもケースによって以下のような資料の提出を求められます。
・登記簿関連
・確定申告書
・源泉徴収票
・テナントの賃貸借契約書
etc
事前相談の際に必要となる資料について確認してください。
■融資決定後
融資が可決した場合は融資金にかかる金銭消費貸借契約を結ぶことになります。
郵送で契約書の書面が送られてくるので、必要事項を記入して公庫の窓口に提出します。
契約書面を確認後に融資が実行されるので、後は約定したとおりに返済を進めることになります。
契約で元本の据え置きが認められている場合、一定期間は利息の支払いのみで済みます。
■融資決定を勝ち取るポイント
ここでは日本政策金融公庫の融資を勝ち取るためのポイントや注意点について見ていきます。
①事業計画書の作り込み
最も重要なのが事業計画書の作り込みです。
公庫の担当者は数多くの事業者と対峙していますから、融資の安全性や企業の成長の見込みなど相手を見抜く目を持っています。
ただお金が足りないので貸してほしいというような安易な気持ちで申請しても高確率で否決されてしまいます。
一般の銀行でも融資審査は相当厳格に行われますが、日本政策金融公庫は税金を原資としているため、公平性や日本経済への投資という目線も入れてより厳格に審査を行います。
確実に返済できることを丁寧に説明することはもちろん、事業への熱い思いや日本経済への寄与、あるいは事業者としての成長を約束できるような力強い計画書の作成が求められます。
一にも二にも、公庫の融資を勝ち取るには計画書の作成が肝になる事は押さえておいてください。
②自己資金はできるだけ多く
公庫の融資を受けるには原則として一定の自己資金を用意する必要があります。
自己資金の多さは返済の安全性を高める指標となるだけでなく、事業への本気度を示す材料ともなるので、多ければ多いほど融資獲得の可能性を高めることができます。
一時的に借り入れた資金は自己資金とはならず、仮にこうした資金を自己資金として申告すると調査の過程でバレてしまい、心証を悪くして融資は望めなくなるので注意してください。
自身や配偶者が貯めた預金や自身の退職金、資産を売却して得た資金、贈与された返済義務のない資金、生命保険の解約返戻金などは自己資金として申告できます。
③他の借金は事前に完済しておく
他にローンや借金がある場合、事前に完済しておくと有利に働きます。
可能であれば融資を申し込む前に完済できないか検討してください。
④税金の滞納はご法度
もし税金の滞納がある場合は公庫の融資は望めません。
これは一般の銀行等の融資でも同じですが、税金を滞納しているようなところは返済がほぼ望めないので、公庫の融資も絶望的です。
もし税金の滞納がある場合は事前相談の前に完済するようにしましょう。
■まとめ
本章では日本政策金融公庫の融資制度を使うにあたっての申請手順や注意点などを見てきました。
公庫の融資は自分で申し込むこともできますが、事業計画書の準備などで知識や経験が求められるので、公庫融資に通じた認定支援機関を利用して申し込むのがお勧めです。
公庫の融資を勝ち取るにはいくつかのポイントがあるので、上記を参考にして申請に臨んでください。