「貯蓄から投資へ」という国を挙げてのスローガンも随分浸透してきたように思います。
日本では元々金融教育が積極的になされてこなかったので、国が主導して進めないとこうした事業はなかなか浸透しません。
今、私たち国民は一人一人が資産運用について責任を持たなければならない時代になっています。
本章では資産運用とはそもそもどういうものなのか、基本的なところを解説していきます。
そもそも資産運用とは?
資産運用は読んで字のごとく資産を運用するという意味ですが、一般的には運用した上で資産を増やすということまでを指すと理解されます。
例えば「預金」は利息利益が得られる商品性があり、資産運用の手段の一つとして考えられています。
直近では日銀の政策変更により金利が若干上昇しましたが、それでも今の利息は雀の涙ほどで、とても運用している気分にはなれませんね。
それでも預金は資産運用の一種であることは一応理解しておきましょう。
多くの人が考える、いわゆる「投資」は株式や投資信託がイメージできますが、こうした本格的な資産運用は余剰資金(下で見る③)で行うものとされています。
お金に関する啓発を行うFPなどの業界では、手持ちの資金を以下のように分けて考えます。
①日常生活に必要な資金
②近い将来に使うことが予定されている資金
③当面使う予定のない資金
①は食費や住居費など日常で使われるお金のことで、病気になった時の医療費もここに含まれます。
この資金はもし枯渇すると大変ですから、運用するとしても安全な方法で行う必要があり、またいつでも自由に使える状態でないと不安です。
ですから元本が保証されていて、いつでも自由に使える普通預金などの流動資産として保有しておくのが安全です。
②は近い将来使うことが予定されているレジャー費用や車の買い替え、自宅のリフォーム費用、子どもの入学金などです。
この種の費用は今すぐには使わなくてもいずれは使うわけですから、その時に足りなくなっていると困ります。
ですから元本割れをせず、必要になる時点までに確実に現金化できる状態であることが望まれます。
そのため普通預金や定期預金、もしくは国債などの形で運用するのが望ましいでしょう。
残った③が本格的な運用に使える資金で、いわゆる投資に用いるのはこの余剰資金です。
生活の安全を担保するため、株式や投資信託などの本格的な投資商品に振り向けるのはこの余剰資金に限るというのがセオリーになっています。
運用資金を作るには?
上で見た③の余剰資金はなかなか捻出できないよ、という声も聞こえてきそうです。
収入と支出をやりくりして、しっかり貯蓄ができている人や、節約が趣味で資金がどんどん貯まっていく人は問題ありませんが、あるお金は使ってしまうという性格の人はいつまでたっても資金が貯まりません。
そのように余裕資金を作ることが難しい場合、運用に回すお金を作る方法として給料からの天引きや自動引き落としの方法を検討しましょう。
勤め人の人は会社に相談すると自動で積み立て貯蓄の設定をしてくれるところもあります。
また財形貯蓄といって、事業主と金融機関が契約を結び、自動で賃金からの天引きをしてくれる制度もあります。
天引きの目的がマイホームの購入や老後の年金資金の確保に限る場合、一定の非課税措置もあります。
自分でお金を貯めて計画的に運用するのが難しい人は、こうした制度を上手に活用しましょう。
資産運用の基本スタンス
資産運用の基本スタンスとして、特に初心者の方に知っておいてもらいたいポイントがあります。
キーワードとしては「分散」「長期」「積み立て」というワードをぜひ押さえてください。
「分散」は分散投資を指し、これは一つの投資商品に資金を集中投下するのは避け、色々な投資商品に資金を分散ましょうということです。
特にリスク性のある株式などに手を出すときに必ず意識したいもので、特定の商品に資金を集中投下してしまうと、万が一その商品での運用が失敗すると大きな損失がでてしまいます。
ですからリスク性があるものでも性質の異なる商品や低リスクの運用先にも資金を分散し、万が一の際にも損失を最低限にできるようにしましょうということです。
かといって安全とされる預金だけで運用すると、僅かな利息しか付かないので利益を生むのは難しいでしょう。
商品選択にはそれなりの知識が必要になってきますが、ぜひ適切な資産構成を考えて資金の投下先を分散するという意識を持つようにしてください。
「長期」は長期投資を指し、これは短期での儲けを狙うのではなく、長期的に運用する姿勢を持ちましょうということです。
短期での儲けを狙う運用はリスクが大きいという側面もありますが、特に利息が付く商品では複利効果が望めるので、できるだけ長期での運用を意識したいところです。
複利とは、発生した利息にさらに利息が付き、利息利益が雪だるま式に増えていくものです。
年齢の若い早い時点で資金を投下すると、その分長期間複利運用が可能となり、大きな成果を望むことができます。
年齢が若いうちに資金投入を行うのがポイントとなるので、政府は大学生などの若い世代の人にこの点を伝えるべく啓発を行っています。
三つ目の「積み立て」は積立投資のことです。
一定期間に継続して新たな資金を運用先に投下することで、リスクを平均化しつつ利益の最大化を図ることができます。
株式や投資信託などを運用先にする場合、「ドルコスト平均法」を用いることでリスクを避けつつ、利益の最大化を図ることができます。
これは、同じ銘柄の商品を定期的に一定額ずつ購入していく方法で、価格変動リスクを押さえた投資が可能になります。
一定額ずつの購入ですから、価格が高い時には購入数が少なくなり、価格が安い時には購入数が多くなります。
これを長期間継続することで、平均購入単価を下げてお得な投資が可能になります。
本格的な投資商品に手を出す際にはぜひ意識してください。
まとめ
本章では資産運用とはどういうものなのか、基本的な考え方やポイントについて見てきました。
本格的な投資をしてみたいと思っている人は、まず自分が保有するお金を三つに分けて、どれくらいの余裕資金があるのか確認してください。
リスク性のある本格的な投資は余剰資金で行うことを心がけ、無理な投資は避けるようにしてくださいね。