「朝からバタバタで、気がついたら夕方になっている」——中小企業の経営者とお話しすると、こうした声を本当によく聞きます。打ち合わせ、電話対応、スタッフへの指示、突発的なトラブル。一日中動き続けているのに、「大切なことを考える時間」だけがいつも後回しになっている。そんな経営者の方に、ぜひ試していただきたいことがあります。それが「朝の10分」を意図的に使うことです。
私たちスタッフが多くの経営者の方と関わる中で気づいたのは、うまく経営が回っている方ほど「一日の最初の時間の使い方」にこだわっているということです。特別なことは何もしていないのに、なぜか落ち着いていて、判断が速い。そのような経営者の方に話を聞くと、多くの場合「朝に少しだけ自分のための時間を持っている」という共通点がありました。

「反応」で始まる一日と「意図」で始まる一日

「反応」で始まる一日と「意図」で始まる一日

多くの経営者の一日は、スマートフォンの通知から始まります。朝目が覚めた瞬間にメールやメッセージを確認し、誰かの連絡に「反応」することで一日がスタートする。このパターンに慣れてしまうと、一日中「誰かのために動く時間」になりやすく、「自分で考えて動く時間」がどこにもなくなります。
一方、朝の10分を意図的に使っている経営者は、「今日自分が最も重要なことは何か」をその10分で決めてから動き始めます。メールの返信より先に、自分の思考を整理する。これだけで一日の質が変わると、多くの方がおっしゃいます。反応で始まる一日は他者主導、意図で始まる一日は自己主導です。経営者にとってどちらが理想かは、言うまでもないでしょう。

朝の10分で「何をするか」

朝の10分で「何をするか」

では、具体的に何をするのでしょうか。私たちがよく聞くパターンをいくつかご紹介します。
最もシンプルなのは「今日の最優先事項を1つだけ決める」ことです。タスクリストを見て「今日これだけは絶対に終わらせる」という1つを決め、そのために何をするかを考える。10分あれば十分できます。「ToDoリストの全部をやろうとするから疲弊する」という経営者の方が、これをきっかけに気持ちが楽になったとおっしゃっていました。
もう一つよく聞くのが「昨日の振り返りを1〜2分だけ行う」というものです。「昨日うまくいったことは何か」「気になったことはあったか」を頭の中で簡単に整理する。日記を書く必要はありません。ただ少し考えるだけで、昨日の経験が今日の行動に活きるようになります。
また、「財務の状況を1分だけ眺める」という習慣を持つ経営者の方もいらっしゃいます。通帳アプリや会計ソフトを開いて残高と昨日の入出金を確認するだけです。深く分析するわけではなく、「感覚をつかんでおく」という程度ですが、これだけで月末に慌てることが減ったとおっしゃる方は多いです。前回の記事でもお伝えした「週1時間のお金の時間」と組み合わせると、より効果的です。

「10分なんてない」という方へ

「10分なんてない」という方へ

「そんな余裕はない」という声も当然あります。ただ、10分という時間は「作るもの」です。起床を10分早める。出勤前の車の中で過ごす。スタッフが来る前のオフィスで静かに座る。場所や手段は問いません。大事なのは「何かに反応する前の時間」を確保することです。
実は、忙しい経営者ほど「まとまった時間を作ろうとして結局作れない」というパターンに陥りがちです。1時間の戦略会議より、毎朝10分の思考習慣のほうが、長期的には経営に大きなインパクトを与えます。ハードルを低くすることが、継続の秘訣です。

習慣が「判断の質」を変える

習慣が「判断の質」を変える

私たちが日々の相談の中で実感するのは、「いつも追われている経営者」と「落ち着いて判断できる経営者」の差は、能力よりも習慣にあることが多いということです。情報量も仕事量も大差ないのに、一方は常にギリギリで、もう一方には余裕がある。その違いを生んでいるのが、一日の始まりの使い方です。
朝の10分は、仕事の効率を上げるためだけのものではありません。「自分がどこに向かっているか」を確認するための時間でもあります。日々の業務に追われていると、木を見て森を見失うことがあります。10分の余白が、そのズレを少しずつ修正してくれます。
まずは明日の朝、スマートフォンを見る前に10分だけ、自分のための時間を作ってみてください。きっと違いを感じていただけるはずです。

よくある質問

Q. 朝の時間を有効活用するために、まず何から始めればよいですか?
A. まずは「起きてから最初にスマートフォンを見るまでの時間を10分延ばす」ことだけを試してみてください。その10分で何をするかは後から決めても構いません。「何も反応しない時間」を作るだけで、一日のスタートが変わります。
Q. 夜型の経営者でも「朝の習慣」は効果がありますか?
A. 夜型の方は「起床直後」にこだわらず、「その日の最初の仕事を始める前の10分」と置き換えるとよいでしょう。時間帯よりも「反応する前に意図する」という順番が大切です。
Q. 朝の習慣をどうやって続けられますか?
A. 完璧にやろうとすると続きません。「できなかった日があっても次の日に戻ればいい」という軽いスタンスが長続きのコツです。また、同じ場所・同じ飲み物など「儀式」を作ると習慣化しやすくなります。