身近な経済や消費に影響することについては誰もが意識を向けていると思いますが、経営者としては日本国全体、そして世界の経済動向についても意識を持っておきたいものです。
この回ではグローバル経済の動向について経営者が知っておくべきトレンドを見ていきますので、ぜひ参考になさってください。
世界経済の見通しは?
グローバル経済については、これを専門に取り扱う機関が発表する指標を捉えることで効率的に状況を把握することができます。
グローバル経済を取り扱う機関はいくつかありますが、まずは世界銀行が発表する見通しについてピックアップしてみましょう。
今年1月にアナウンスされた世界銀行のプレスリリースによると、2025年の世界経済の成長率は実質GDPの伸び率として2.7%であると予想しています。
これは前年2024年と同率の推移となるもので、成長率としてはそれほど伸びを示さないとの予測を出しています。
さらに、各国政策の不確実性なども考慮するとマイナス要因も多くあるとみて、経済成長にマイナスの逆風が吹く可能性も示唆しています。
これはアメリカのトランプ政権を意識してのことと思いますが、貿易の分断化が進む場合に世界全体で見て経済の停滞が危惧されるとの考えに基づくものと思われます。
加えて、終わりが見えない紛争の影響なども加味すると、主要国での成長率の低下、インフレの上昇などの懸念点も見えるとしています。
IMFによる今後の成長予測
次に国際通貨基金(IMF)の世界経済予測を見てみます。
こちらも基本的には世界経済の不確実性について懸念を示すものとなっていますが、経済成長については地域ごと、国ごとにかなり差が感じられるものとなっています。
巷では、経済成長については今年はインドが伸びると予想されていたところ、IMFも同様に見立てをしたようで、中東・中央アジアエリア、かつ新興市場国分野でインドの経済成長予測が最も伸びる予想を出しています。
全体的に、日本を含む先進国が成長率を鈍化させる予想で、逆に新興市場国、発展途上国の方面で経済成長が加速するとの予想が出ています。
世界GDPベースで見た時に、先進国全体では成長率が1.9、対して新興市場国・発展途上国では4.2の予測となっています。
先進国における実質GDPの年間変化率として上位から見てみると、先にアメリカが2.7%、スペイン2.3%、カナダ2.0、イギリス1.6%、などとなっていて、日本は1.1%の数値となっています。
成長率の視点ではそれほど大きな変化が無いと予測されているといっていいでしょう。
これに対し、新興市場国の方が経済成長の面では期待が持てるとの予測で、こちらではまず最上位がインド6.5%、中国4.6%、サウジアラビア3.3%、ナイジェリア3.2%などとなっています。
インドが中国を抜いて成長を見せるとの予測が注目できることと、IMFの見立てではロシアが1.4%と低い数値になっていることに着目できます。
ロシアは戦争中であるにもかかわらず弱ったところが見えないでいましたが、一応IMFの見立てでは経済成長力は抑えられているとみて良いと思われます。
トランプ政権のかじ取り
世界全体の経済を考える際にどうしても頭に浮かぶのがアメリカのトランプ政権の手綱さばきです。
彼らの立ち振る舞いによって良くも悪くも世界全体に大きな影響が出ることになるので、一挙一動に注目がかかります。
直近では対日本の通貨政策として円安ドル高を問題視し、日本政府に円安政策を見直すように正式に通知してきました。
ただ当然ながら日本政府は円安政策はとっていませんし、むしろ円安を抑制する働きを一生懸命やってきたところです。
日本としてはむしろトランプ氏にドル高の是正策を積極的に考えてもらいたいのが政府の本音と思われます。
またカナダ、メキシコ、中国に対する関税措置も発動され(一部は時限的に執行を免除)、中国はすでに断固たる報復関税措置を発表していますし、同盟国カナダも報復関税を取ることを検討しています。
関税戦争がいよいよ火ぶたを切ったとみて、今後の広がりがどうなるか注視しなければなりません。
関税政策はアメリカにとっても諸刃の剣となるものですが、まだ始まったばかりですので今のところは主だった問題は起きていません。
今後はアメリカ国内の主な経済指標を基に、どのような影響がでるのか注視していくことになるでしょう。
アメリカも日本と同じく個人消費が国内総生産の主な要因となっていて、GDPの7割程度を個人消費が占めます。
アメリカのGDPは米国商務省が四半期ごとに発表していて、速報性に優れた指標として評価されています。
また労働省が発表する失業率や非農業部門雇用者数などが景気との関連が強く、経済指標として注目されています。
他にもISM製造業景況指数や消費者物価指数などもよく取り上げられる指標で、日本のテレビでも度々動きが報道されることがあります。
日ごろのニュースチェックでぜひ注目してみてください。
まとめ
本章ではグローバル経済の動向について経営者が知っておくべきトレンドについて見てきました。
IMFや世界銀行の見立てとしては、2025年は先進国よりも新興国の方がGDPの成長が大きくなる予想で、アジアではインドと中国が数値が大きくなっています。
トランプ政権の関税政策でグローバル経済の分断や縮小が心配されているところで、こちらの問題がかなり懸念されています。
しばらくの間、彼らの動向が注目を浴び続けることになるのは間違いないでしょう。