ビジネスモデルの立案は起業家としての本領を発揮する最たる場面と言って良いでしょう。
儲けを生み出すカラクリを見抜く、あるいは作り出す視点は一般人ではなかなか見出すことができません。
ある意味才能がないとできないことでもあり、ビジネスモデルの策案は起業家としての腕の見せ所です。
一筋縄ではいかない作業ですが、本章ではビジネスモデルとはどういうものか、どのようにして作っていくのか、考え方や理論など基本的なところを押さえていきます。
ビジネスモデルとは
ビジネスモデルは企業がどのように収益を上げていくか全体像を構築するもので、マクロ的な視点で儲けのカラクリや仕組みと考え、これを具体化したものです。
製品やサービスの考案、市場への提供方法、ターゲット層、収益源、コストなども含めて収益を上げる仕組み全体がビジネスモデルです。
次の項ではビジネスモデルを構成する各種の要素について見ていきます。
ビジネスモデルを構成する要素
ビジネスモデルは実に多くの要素で成り立つもので、一つ一つの要素はそれ自体が大変難しい課題となり得えます。
以下でそれぞれ見ていきます。
①どのような価値を提供するのか
顧客に提供する製品やサービスの価値についてで、例えば顧客が抱えているであろう問題の解決方法、あるいは既存の他の製品よりも優れている点などです。
顧客が喜ぶ価値を提供できなければビジネスは成り立ちません。
②ターゲット層
どの顧客層を対象にするかという要素で、参入する市場を明確にしてターゲット層を具体化します。
想定顧客のニーズや行動を理解しないと相手に刺さる商品やサービスを提供できません。
③販売チャンネル
顧客に価値を提供するための手段で、製品やサービスをどのように顧客に届けるかということです。
近年は販売チャンネルが多様化しているので様々なチャンネルを検討できます。
オンライン販売や店舗販売、パートナーシップを組んで他者に販売を委託する方法などがあります。
④顧客関係
顧客との関係をどのように構築し、また維持するかという点で、カスタマーサポートの組み方なども上手く考えることで満足度を上げることができます。
⑤キーリソース
ビジネスを運営するために必要なリソースで、オフィスや営業車などの物理的な資産、社員たる人的資源、他にも知的財産、財務資源なども含まれます。
⑥パートナーシップ
ビジネスを回していくための競業者も必要です。
ほとんどのビジネスは自社だけで成り立たせることはできません。
製品を作るにしても材料の仕入れが必要ですから、サプライヤーや流通業者、技術パートナーなどをどう確保していくかといった視点も求められます。
⑦コスト構造
事業運営にかかるコストも重要な要素です。
これを見誤ると起業しても早々に費用倒れで頓挫してしまいます
固定費、変動費など細かいコストまで考慮する必要があります。
ビジネスモデルの種類
ビジネスモデルを俯瞰すると、大きく以下のような形を考察できます。
①製品販売モデル
多くの事業で見られるような比較的単純なモデルです。
製品を作って顧客に販売し、対価を得ます。
②サブスクリプションモデル
顧客は定期的な料金を支払ってサービスを享受します。
動画コンテンツなどの領域で多用されているので、最近は自宅で映画を見放題といった人も多いと思います。
あるいは会員制のスポーツジムなどもこの領域と親和性があります。
ただサブスクリプションは物販でも活用することができ、例えば飲料水の継続宅配サービスなどで利用されています。
顧客が日常的に継続して消費するものであればこれに限らず適用させることが可能です。
③広告モデル
広告掲載により収益を出すタイプです。
YouTube広告などが有名ですが、Googleやフェイスブックなどでも広告モデルを利用できます。
④仲介モデル
取引を仲介することで収益を出すタイプで、AirbnbやUberなどが有名です。
仲介モデルでは世の中で「あったらいいな」と思われていることに気づけるかどうかがポイントになります。
⑤フリーミアムモデル
基本サービスは無料で提供して一定の満足を得てもらいつつ、有料の追加機能やプレミアムサービスなどを提供して対価を得るタイプです。
ゲームビジネスの課金システムが有名ですが、他にもDropbox、Zoomなどで有料機能の提供に対して費用を払うものなどもあります。
基本機能だけで満足されてしまうとビジネスにならないので、どうやって有料サービスの購入を引き付けるかがポイントになります。
市場調査
参入を考える市場やそこに存在する潜在顧客の調査です。
ターゲット層を理解しておかないと刺さる商品やサービス開発に繋げられませんから、市場調査は重要な過程です。
以下のようなステップを踏んで進めていきます。
①市場セグメンテーション
セグメンテーションは「区分け」など意味があり、市場を細分化してターゲットを特定します。
年齢や性別、収入、住んでいる地域などによって区分けが可能です。
②顧客ペルソナの作成
ターゲットとなる顧客の具体的なプロフィール作成の段階です。
顧客ペルソナを考慮する際にはその顧客が抱えるニーズや価値観、購買動機なども具体的に考えます。
③競合分析
競合他社の強みや弱みを分析して、自社の競争優位性がどの程度あるのか見極めます。
競合他社のビジネスモデルや価格設定などを調査すると自社の収益モデル構築のヒントを得ることができます。
④インタビュー
潜在顧客にインタビューを行ってニーズや課題を把握し、これに見合った製品開発に繋げます。
試作品を試してもらってインタビュー行えばより具体的な成果を得られるでしょう。
試作品を作る資金確保に問題がある場合、他社の既存製品を試してもらってインタビューを行い、不満足な点を洗い出して自社製品の開発につなげることもできます。
ビジネスモデルの検証
たたき台となるビジネスモデルを構築したらテストを行って検証します。
一部の市場や地域、あるいはネット空間などで自社製品やサービスを一定期間利用してもらい、問題点や改善を要す点があれば報告してもらいます。
パイロットユーザーとなる人には無料あるいは低価格で製品やサービスを提供し、代わりにフィードバックを貰ってより良い製品やサービスの開発につなげます。
一定期間サービスや製品を利用してもらうことになるので、その間に密接な関係を築けないと適切なフィードバックを受けられなくなります。
パイロットユーザーとして製品開発の協力をしてもらうということを十分納得してもらったうえで、フィードバックの報告方法や回数などは事前に相談して共有しておきます。
良い関係を築き、またより良い製品の開発につなげられれば、パイロットユーザーがそのまま自社製品のファンになって本製品の購入者となってくれるでしょう。
まとめ
本章ではビジネスモデルの作り方について見てきました。
一般的にビジネスモデル作りは大変苦労を伴うイメージを持たれますが、起業家にとってはこれを楽しみながらやれることが一つの素質であると言えます。
世の中の不満を解消する、不便を便利に変えていくビジネスモデルができればきっと受け入れられるはずです。
これから起業を考える方はぜひ柔らかい頭でビジネスモデルを考えてみてください。