「経営改善計画書」と聞いた時、ベテランの経営者の方は多少身構えてしまう人もいるかもしれません。
経営改善計画書は様々な場面で用いられるのですが、資金調達を考える場面では金融機関に求められることもあります。
そのイメージが強い場合、経営改善計画書に対しては「面倒くさい」とか、「時間がかかる」など負のイメージが持たれることもあります。
ただ実際には企業にとって、また経営者自身にとってプラスに働くものですので、この回では経営改善計画書がどのようなものか、作り方や活用の仕方について解説していきます。

■経営改善計画書とは

経営改善計画書とは

経営改善計画書は、文字通りとれば自社の経営を改善するための計画をまとめた書面ということになります。
例えば経営者や経営層が自社の現状を把握して問題点を洗い出すために作成されることがあり、この場合は社外との関係ではなく、あくまでも自社内部で利用されるということになります。
実際の会社経営でこの計画書が求められるのは融資の際が多いと思われます。
金融機関に融資を打診する際、中小企業であれば経営改善計画書の提出を求められることが多いでしょう。
経営は順調だけれども、イレギュラーな事案でキャッシュが多少足りなくなった、などのケースでは別ですが、通常は資金不足に陥った不手際が認められるということで、貸し出した資金を確実に返せる見通しが欲しいと金融機関は考えます。
そこで、融資対象となる企業に経営改善計画書の提出を求めるというわけです。
経営改善計画書を上手く作り上げることで融資を引き出しやすくなるメリットがありますし、会社の内部資料として作成する場合も経営者が現状を把握できます。
以下の項では経営改善計画書の作成手順を見ていきます。
ちなみに、特に決まった書式があるわけではないので社内資料として作成するのであれば書式は自由です。
金融機関に提出する場合、その金融機関独自の書式があることが多いので確認してください。
また国や自治体の起業支援を行う部署で独自の参考書式を公表していることもあります。
ここでは特に書式は意識しませんが、一般に計画書にまとめられる事項を網羅して見ていきます。

手順1:財務諸表の転記と状況把握

最初に行うのは現状把握ですが、これを行うために必要になるのが財務諸表です。
経営者や経営層が現状を把握するため、また融資打診が目的であれば金融機関に現状を伝えるためにも損益計算書や貸借対照表のデータを経営改善計画書に落とし込みます。
ここで把握すべき事項を捉えていきます。

①売上高や粗利益率、売上高経常利益率、経費の推移
②既存の借入先や借り入れ金額、返済額や利率、提供している担保など
③資産の内容、在庫や不良債権の有無など
④税金や社会保険料などの納付状況
⑤経営者の個人名義の借入の有無
⑥担保に提供していない資産
⑦経営者が提供できる個人資産
etc

こうした情報を確認することで会社の現状把握に努めます。

手順2:課題の洗い出しと経営目標の設定

現状を把握したら、次は課題の抽出と問題解決のための目標設定です。
なぜ売り上げが落ちたのか、取引先が減ったからか?それとも他社との競争力が低下したからか?もしくは販売員が不足しているのか?などの課題の洗い出しを行います。
資金繰りに問題があるならば、なぜ資金が足りなくなったのか、無駄な経費が掛かっているのか?人員過剰になっているのか?などを疑い、数値からその原因を探っていきます。
原因が判明したら、これを改善するための目標を設定します。
例えば売り上げを上げるための方策として単価を上げる、数量を伸ばすなどが考えられます。
単価を上げるのであれば顧客を逃さないために付加価値を付けるとか、競業のいない地域へ出店するなどが考えられるでしょう。
数量を伸ばすのであればおまけを付ける、割引をする、販路拡大を目指すなどが考えられます。
計画書にはそのための具体的な方策まで落とし込んで記載することになります。
経費削減の方面では人件費その他の経費削減の方法も記載します。
広告宣伝費は資金が必要な紙媒体をやめてWEB広告に転換する、メールを活用して経費を削減するなどです。
人件費の削減はうまくいけば効率的な経費削減につながりますが、整理解雇になると従業員との摩擦が生じることもあるので一定の留意が求められます。

■数値目標の設定

数値目標の設定

上で見た「課題の洗い出しと経営目標の設定」に沿い、今後数年間の間に売り上げや経費削減がどうなるのか予想して数値化します。
社内の経営改善資料として作成する場合は経営者や経営層が今後の方針を自身に落とし込むことができ、融資の際に利用するならば金融機関の担当者に返済の実現性を示すための資料になります。

■専門家による作成支援も受けられる

専門家による作成支援も受けられる

経営改善計画書の作成は経験が無いとイマイチ感覚がつかめないかもしれません。
経営改善計画書の作成は自治体によっては費用のサポートを受けられることがあるので、自治体の担当窓口や商工会などに相談してみると良いでしょう。
その機関の職員が支援してくれることもあれば、専門家を紹介してくれることもあります。
自治体によっては専門家費用の援助を受けられることもあるので、一度相談してみるのがお勧めです。

■まとめ

本章では「経営改善計画書」がどのようなものか、利用場面や作成方法などについて見てきました。
経営層向けに社内資料として作成されることもあれば、資金調達の際に金融機関向けに作成されることもあり、個別のケースで具体的な記載内容は若干異なりますが、概ね見てきた内容が納められます。
金融機関向けに本格的な計画書作りが必要になった場合は専門家の指導を受けるのがお勧めですので、自治体の支援窓口などに相談してみましょう。